再現フレンズ

司法試験系の論文試験の再現答案をあげるよ

中央ロー 2020年度 刑法 再現答案

○答案 36/120点

第1.乙の罪責

1.乙のAを後ろから羽交い締めにした行為1は暴行罪(刑法208条)の構成要件にあたるが、正当防衛(36条1項)が成立するために違法性阻却される。

⑴行為1は不法な有形力の行使たる「暴行」にあたるし、行為態様から故意もあるので、構成要件に該当する。

⑵一方、乙はAが甲に殴りかかるという暴行罪にあたりうる「急迫不正の侵害」に対し、甲という「他人」の身体という「権利」を「防衛する」意思で行為1をした。酔っ払っているAには必要かつ相当な「やむを得」ない行為といえる。

さらに、甲は「働きもしないで朝帰りか」とたしなめているが、社会相当性を害するほどの自招行為ではない。

2.乙の、Aを床に組み伏せた後、甲が下半身を押さえつけたのを利用して、Aの頸部を指で挟む形で思い切り体重をかけた行為2に殺人罪(199条)が成立する。

28歳の男性という一般的に力のある乙が、頸部という枢要部にうつ伏せの状態で体重をかけるのは生命侵害の現実的危険ある実行行為にあたる。

Aは、乙の頸部圧迫に起因する窒素死が死因だったので死亡結果と行為に因果関係もある。行為態様から故意もある。

3.乙の、Aをロープで縛り付けた行為3に犯罪は成立しない。

⑴Aは頸部を圧迫された時点で「死体」になっていたので、行為3は死体を「損壊」したものであり、客観は死体損壊罪(190条)にあたる。一方、乙はAが暴れないように行為3をしたから、Aが死亡しているとは認識しておらず、主観としては逮捕罪(220条)にあたる。

⑵ここで、故意責任の本質とは規範に直面したのにあえて行為をしたことに対する道義的非難にある。規範は構成要件として与えられているので、構成要件の範囲で主観と客観が符合する範囲で故意が認められる。

⑶保護法益について、死体損壊罪は国民の宗教的感情を、逮捕罪は身体・移動の自由を対象としており、法益の対象が異なり重なり合いがない。そのため、故意が認められない。

4.乙の、Aの机から15万円取り出した行為4に窃盗罪(235条)が成立しないか。

⑴現金15万円は「他人に財物」にあたるが、Aは死亡しているので占有があるとはいえず行為4は「窃取」にならないのではないか。

Aは死亡しているものの加害者である乙との間ではAの占有保護を図るべきである。ここで、乙はAの死亡したことを利用して、殺害行為と一連のものとして財物の占有を移転させたといえる。そのため、行為4は「窃取」にあたる。

⑵行為態様から故意はある。乙は、逃走資金にする目的があったので、経済的用法に従って利用処分する不法領得の意思もある。

⑶よって、同罪が成立する。

第2.甲の罪責

1.乙との行為2につき、甲に殺人罪の共同正犯(199条、60条)が成立しないか。

⑴乙は、下半身を押さえつけるという重要な役割で同罪を自己のものとして積極的に参加する「正犯〜意思」があった。

⑵乙には、甲が下半身を押さえつけた後に頸部を押さえつけた方が大人しくなると思い、行為態様を変えたので「共同〜意思」はあるし、甲も乙に協力しているので同「意思」がある。

Aは死亡しているので、「共同〜事実」もある。

⑶しかし、乙は甲が頸部を押さえていることを認識していないので同罪の故意がないのではないか。

故意は、上記第1.3⑵にあるように主観と客観の符合する範囲でのみ認められる。

甲の主観は傷害致死罪(205条)である。結果的加重犯は加重結果発生の類型的危険を含む基本犯を強く禁圧する店に趣旨があるから、基本犯と加重結果に因果関係さえあればよい。甲は少なくとも暴行罪の故意はあり、甲は乙と協力して死亡させている。

しかし、客観としては甲と乙はAを殺した。

そのため、狭い傷害致死罪の範囲でのみ犯罪が成立する。

⑷よって、傷害致死罪の共同正犯が成立するにとどまる。

第3.罪責

乙の3.4は併合罪(45条)として処理される。

以上

○感想

共同正犯型なので、行為で書こうとしましたが、乙の事実が多いことや甲との主観にズレがあることから人ごとに分けました。

過剰防衛やってないです…見逃してました。

過剰防衛だと共犯と正当防衛の論点はないんですかね?それだとあまりダメージはないですけど。

あと、共同の射程の処理って故意責任の本質で処理していいのか…

見直すほど不安になる科目でした。嫌だなあ🦍