再現フレンズ

司法試験系の論文試験の再現答案をあげるよ

新司12勝4敗投手流・あまり負けない戦い方

【はじめに】

先日、出身ローである都立大ローで合格者報告会が行われ、僕も合格者として勉強法等の報告をさせて頂きました。

僕以外にも合格者の方々が報告をされており、それぞれ違った受験戦略のお話をたくさん聞くことができ、参考になりました。

この記事は、僕が報告したときの参照メモを、少し敷衍し受験生全体に参考になるように加筆修正したものです。確実に落ちないためにはどうすればいいかを考えて試験に臨んだので、その観点で参考になるかと思います。

(タイトルについてですが、こないだ某アカウントが新司法試験全16回の合格最低順位を令和4年司法試験に換算した順位を列挙していましたが、僕は12勝4敗でした。確実に落ちないという観点ではそこそこ参考になる実績だと思います。)

 

【どれくらいを目標にするのか】

・目標は、多少失敗しても落ちないようにすることです。司法試験は大学受験と異なり、滑り止めがなく受験失敗時の人生へのリスクが今までの受験に比して高いので、確実に合格すること(落ちないようにすること)が重要です。

この「落ちないようにすること」というイメージがとても重要です。落ちないようにすることは、みんなができることを確実にできるようにすることです。複数回受験生の方で「来年は上位合格してやる」と意気込む方もいますが、とても危険なイメージだと思います。まず、”絶対に落ちないようにどうすればいいのか”を考えるべきです。あいかわ先生も「上位合格は基礎の精度の高さにある」みたいなツイートをしていたかと思います。まずは、「落ちないようにすること」を強烈にイメージすることが重要だと考えます。

 

・では、落ちないようにするための具体的な数値目標はどのくらいでしょうか?確実に落ちないようにするには確かに1位を狙うべきですが、1位を目指す勉強と落ちないようにする勉強は全く違います。1位と100位、100位と700位では見えている世界が全く違います。

700位から1400位まではあまり違いはなく、受験技術・戦略の巧拙に依存しているような気がします。落ちないようにする勉強では、700位から1400位の分布をまず目指すべきです。

しかし、1000位から1400位の分布は少しでも失敗したら落ちます。司法試験はどんな人でも1科目は失敗する可能性がありますから、確実に合格するという観点ではこの分布を目標にすると悪手です。

したがって、具体的な目標順位は700位(択一120〜140、論文各科目平均50〜55点)です。

 

【50点答案とは何か?】

これまたイメージの話ですが、50点を確実にとるためには、イケメンっていうより雰囲気イケメンを目指しましょう。司法試験は基礎知識さえあれば、あとは見せ方の試験です。説得力の試験です。学説や判例の理由付けなど、中身の正確性は理解する上では重要ですが、落ちないようにするためには重要ではありません。

 

50点答案を確実に量産するための要素を以下で説明します。

 

①問題文の指示を絶対に守る(誰から誰?、結論の方向性など)

問題を解くときはまず、設問文の指示から読むことをおすすめします。設問には「原告適格を認める方向で」や「甲の罪責を論ぜよ」(乙が登場してても検討不要)など、問題を解くときの指示があります。これを無視して論述すると、全く点数が入りません。

 

②途中答案しない

途中答案をすると、その部分の点数は0点です。わからなくても何かしら書いておけば、採点側からしても1点くらいはあげられるかもしれません。途中答案の防ぎ方については本ブログにある記事も参照してみてください。

 

③条文からスタートする、原則→例外の順番をしっかり表現する

原則→例外の順序で事案を処理することは、成文法である日本の法律においてとても重要です。予測可能性の確保や適正手続の担保の側面から、通常は条文通りの処理をします。

条文の解釈をして処理するのは例外的場面です。例外的場面は、条文の病理現象として判例法理に規定されます。

この思考過程を理解していることを示すために、条文から処理します。より抽象化すると「原則→例外」の順序を守って処理します。

 

④三段論法を守る

規範→事実→評価→規範の繰り返しの順に論述します。

規範は正確に、理由付けは短く書きます。

事実は丸写しします。例えば、「刃渡り15cmのサバイバルナイフ」を勝手に「危険なナイフ」と引用しないでください。「危険なナイフ」は事実ではなく、評価が含まれています。事実の適示に大きく点数が振られていますので、ここの引用を誤ると点数が取れなくなります。

事実引用・事実評価後には必ず規範に戻ってください。

 

⑤基本的な定義を覚える

裁判上の自白、偽造、弁論主義3つ・・・。それぞれ定義をすらすら言えますか?

みんなが書ける定義はしっかり書かないと大きく点数を下げることになります。

 

定義の重要性は思っているより高いです。

例えば、偽造の定義は「名義人と作成者の同一性を偽ること」です。名義人は「文書から理解される意思観念の主体」です。作成者は「文書を作成した意思の主体」です。

問題文を読むときにこの定義が頭に入っていないと、問題文をみて検討すべき犯罪を探し出せません。株主総会の決議書を偽造した問題が過去に出題されましたが、名義人の定義がわからないとどこを名義人として抽出できるか当たりがつけられず、作成者とのズレがあることに気付かずに論点を落とす可能性があります(あの問題の雰囲気であれば定義覚えていなくても偽造っぽいことには気づきますが・・・)。

さらに、定義が書けないと、三段論法の大前提になる抽象論の提示ができず、事実を引用したとしても法的な議論をしたことになりません。「文書には甲の名前が書いてあるが、作ったのは乙なので偽造である。」と論述しても素人のツイートと変わりません。

 

⑥典型論点を確実に処理する

みんなができることを確実にできるようにするという観点から、まず、辰巳の星論点・各予備校のA論点を確実に書けるようにするということが必要です。確実に書けるとは、論点を抽出できるとか規範を書けるとかいうレベルではありません。加藤ゼミナールの総まくり講座のテキストの無料公開部分を見てください。典型論点はあのレベルで処理できないと今の司法試験では負けてしまいます。

 

次に、重要なB論点の順で片付けます。ここで重要なのは、メリハリ付けです。Aランク論点が確実に処理できないのに、Bランク論点に時間をかけてはいけません。みんなができることを確実に処理するのが重要です。

 

【スケジューリング】

・直前期(3ヶ月前)には起案もできないし、新しい知識を入れるのも難しいです。

模試までに1周、本番までに1周の総復習ができると安心して本番に臨めます。

時間がないので、2日で1科目で一元化教材を回します。人間の記憶は質ではなく見た回数の方が重要なので、大量・高速回転が重要です。

上述の通り、直前期は同教材だけを見るので、一元化教材には、規範だけでなくあてはめの順序や問題の読み方、自分のミスを全て記載しておく必要があります。

 

・択一は毎日やると直前期に焦って論文の時間を失うことが防げます。直前に高速回転できるよう苦手な肢はマークしておくと便利です。

 

【メンタル】

落ちたら人生終わるなあと考えてしまい不安になることもありました。落ちても就活すれば死ぬことはないようなので、絶望する必要まではないと思ってはいました。ですが、ここでぬるく勉強して落ちるより、全力を尽くして挑んで落ちる方が今後の人生の糧になると思い、開き直って勉強してました。

(豆ごはん先輩が報告会で「司法をあきらめたとしても就職できている人もいるから、落ちたら死ぬとか考えず、絶望せずに頑張って欲しい」とおっしゃていたことがとても印象に残っています。就職できるかについては、正直属人的な側面があるかと思います〔僕のような社会不適合者だと就職の難易度が上がる〕。しかし、ネット記事を見る限り、それなりに就職できている人は見受けられますし、落ちたら死ぬみたいなメンタルだとキツすぎて勉強に集中できません。ここらへんはロースクールの制度上、どうしても不安になりますが、なんとか考え方を構築してマインドを整える必要があります。

 

逆に、超直前期からは“受かる”ってイメージしか持たないようにしましたし、もう落ちても別にいいやみたいなマインドにしました。そういうマインドにしないと、試験中に方向性に迷って型が崩れてしまうからです。

憲法の問題を見た瞬間、(げっ・・・)と思いましたが、数秒後には笑ってました。(バカじゃねーの、司法試験委員会wwwwwこんなん試験にならねーよwww)って思ってました。型だけ守ってテキトーに書き、結局憲法はA(たぶん57点)でした。

このマインドの切り替えについては僕はかなり強かったです。たぶん中央ローで落ちてどん底に落ちたからだと思います。ありがとう中央ロー・・・。

 

おわり