再現フレンズ

司法試験系の論文試験の再現答案をあげるよ

令和4年司法試験 行政法 再現答案(原告適格再現せず)

行政法 再現答案(公法系科目115.76 憲法A行政A)

(全部で5枚?設問1で2枚、設問2で0.7枚、設問3で2.5枚くらい。一行最大32、平均25)

 

第1、設問1

1 E及びFは本件申請に係る許可という「処分」の「相手方以外の者」であるから、「法律上の利益を有する者」にあたらない限り、原告適格は認められない(行訴法9条1項)。

2 「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利または法律上保護された利益を侵害され、または必然的に侵害されるおそれのあるものをいう。当該処分の根拠規定が、不特定多数者の具体的利益を個々人の個別的利益として保護する趣旨を含む場合、当該利益は法律上保護された利益にあたる。

3 水害や災害により生命・身体・財産を侵害されない利益

 

4 生活用水を確保する利益

 

第2、設問2

1 訴えの利益(9条1項かっこ書き)が認められるには、原告において取消訴訟により得られる法律上の利益が存在することが必要である。

2 昭和59年判決は、建物完成後に建築確認をしても建物の違法性の除去などにつながらないことから、訴えの利益を否定した。

3 本件では、開発行為が終了した場合には、許可自体を取り消してもこれによって法律上の利益は保護されない。しかし、法10条の2の許可が取り消されれば、10条の3に基づいて監督処分をすることができるから、この点で取消訴訟により得られる法律上の利益が存在する。

4 よって、Fに訴えの利益が認められる。

第3、設問3

Fによる違法事由の主張

1 本件申請の許可についてはB県知事に裁量を認めざるを得ない。

  しかし、以下の理由からB県知事には裁量処分の判断過程が合理性を欠き、その結果裁量処分が著しく妥当を欠くため、許可が違法となる(行訴法30条)

2⑴ まず、本件許可基準は不合理なので、基準にしたがった処分は他事考慮にあたる。

   基準が合理的だとしても、拘束力まではないから基準のみに従うのは考慮不尽である。

   基準に拘束力があるとしても、個別事情を考慮しないのは考慮不尽である。

 ⑵ 本件認定は適法なものであり、それに従った処分をすべきなのにこれを考慮しないことは考慮不尽にあたる。

B県の反論

1 行政裁量の有無は、法律の文言と処分の性質の両面を考慮して判断する。

  本件申請に係る許可は法10条の2第1・2項を根拠とするが同条文の要件となる文言は抽象的な文言であり、その理由は開発行為をする際は地域の実情にあわせて専門技術的判断や公益の考慮をする必要があるからである。

  したがって、本件申請に係る許可にはB県知事に行政裁量が認められ、以下の理由から上記許可は適法である。

2⑴ ここで裁量基準たる本件許可基準は合理的なものであるから、これを考慮しても多事考慮にあたらず、裁量の逸脱・濫用にならない。

   法1条と法10条の2第3項に規定する「森林の保続培養」とは、森林の無秩序な開発により森林の持つ機能発揮を阻害しないように、合理的かつ計画的に森林を維持改善することをいうから、許可においてはこの点を目的として判断がされる。

   本件許可基準1-1-①が、開発区域内の私法上の権限を有するものすべてではなく、3分の2以上の権利者の同意でよいとするのは、申請者に過度な負担を課さないようにするためである。これは、合理的かつ計画的に森林を維持改善するという法の趣旨に合致する。

   したがって、本件許可基準は合理的であり考慮できる。

 ⑵ さらに、公表されている裁量基準については国民との間でも行政庁を拘束する。

   裁量基準は、行政の内部基準に過ぎず外的効果を有しないのが原則であるが、それが公表されている場合には公正・平等取り扱いや信頼の原則の要請がある。

   したがって、公表された裁量基準は、平等原則や信義則の法原則を媒介に、国民との間でも行政庁を拘束し、同基準と異なる扱いをすべき特段の事情のない限り、基準と異なる取り扱いをすることは他事考慮として裁量の逸脱濫用となる。

   そのため、3分の2以上の権利者が同意していれば許可するのは裁量の逸脱・濫用にならない。

 ⑶ 3分の2以上の権利者が合意していれば合理的かつ計画的に森林を維持できるし、反対に権利者の数以外を考慮するとあまりにも申請者に負担になって上記のような森林維持をできなくなる。

   したがって、基準と異なる扱いをすべき特段の事情となる個別考慮事情はなく、考慮不尽はないので裁量の逸脱・濫用はない。

3⑴ 法の趣旨・目的は、合理的かつ計画的に森林を維持改善することである。

   しかし、本件認定は本件計画の阻止を意図してされたものだから、上記趣旨・目的に反する。

   したがって、本件認定は違法なものであり考慮できない。

 ⑵ よって、本件認定を考慮しなくても考慮不尽にならず、裁量の逸脱・濫用は認められない。

4 よって、裁量の逸脱・濫用はないので、本件許可は適法である。