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令和4年司法試験 民法 再現答案

民法 再現答案(民事系142.62 民法B商法B民訴C)

(全部で5枚ちょうど、設問1⑴で1枚、⑵で2枚、設問2で1.5枚、設問3で0.5枚)

 

第1、設問1⑴

1 CのAに対する請求は、所有権に基づく物権的返還請求と構成できる。

  Aは甲土地を占有しているので、Cに所有権があるかどうかが問題となる。

2 ここでBは甲土地について無権利だから、Cも無権利となり、Cが所有権を取得することがないのが原則である。

  また、Bの甲土地の所有権移転登記という「虚偽の意思表示」は「相手方と通じてした」もの(94条1項)ではないので、Bは「第三者」(94条2項)として保護されない。

3⑴ しかし、①虚偽の外観作出につき②帰責性ある権利者よりも③第三者の信頼を保護すべき場合は、94条2項の趣旨である外観法理が妥当するので、同条項を類推適用すべきである。さらに、②の検討において虚偽表示が行われるおそれがあるのに、権利者がそれを漫然と放置していた場合には、110条の類推適用により③で要求される信頼は善意無過失であることを要する。

⑵ 本件では、Bが所有権を有していないにも関わらず、甲土地の所有権移転登記をしたので①虚偽の外観が存在する。BはAに対し、抵当権の抹消登記手続に必要であると偽って所有権移転登記手続に必要な書類等の交付を求め、AはBの言葉を信じてこれに応じたが、元業者であるとはいえ友人としてのBに書面を預けるのはAに②帰責性がある。

   しかし、Aは自ら虚偽表示を作出したわけではなく、漫然と放置していただけだから、③としてはCの善意無過失まで必要である。CはBの登記が虚偽表示によることにつき善意である。CはBが短期間で甲土地を手放したことにつき認識しているから、この点で不審事由が存在する。そのため、CはなぜBが甲を短期間で手放したのかを確認する調査確認義務を負う。CがBに対して上記経緯の理由を尋ねたところ、Bは「知らない人と契約を交わすのを不安に感じたAの意向で、いったん友人である自分が所有権を取得することになった」という一般的に合理的といえる説明をしている。したがって、Cにおいて調査確認義務は果たされているといえ、Cに過失はない。

 ⑶ したがって、Cには94条2項が類推適用される。

4 よって、Cに甲土地所有権が認められ、上記請求が認められる。

第2、設問1⑵

1 請求1及び2は、転得者に対する詐害行為取消請求と構成できる(424条の5第1号)。

2 AB間の契約④は424条における詐害行為取消の対象となるか。

⑴ 甲土地は、Aが所有する唯一のめぼしい財産であるから、Aは無資力であるといえる。

⑵ア 「債権」(424条1項)は、詐害行為取消権の趣旨が責任財産保全にあることから、原則、金銭債権であることを要する。しかし、特定物請求権も究極的には債務不履行責任に基づく損害賠償請求権(415条1項)という金銭債権に転化するから、詐害行為取消時に同請求権に転化していれば同「債権」に含まれる。

 イ AD間では、契約③の売買契約によりDがAに対して甲土地の所有権移転債権を有していた。しかし、AB間で契約④の売買契約が締結されたうえ、Bが登記を備えたので、Dの上記債権は履行不能(412条の2第1項)となり、令和2年4月12日時点で損害賠償請求権に転化した。

 ウ したがって、詐害行為取消時に金銭債権に転化しているといえ、「債権」にあたる。

⑶ 「害することを知ってした」かは、行為の客観的側面と行為者の主観的側面を相関的に考慮して判断する。Dに4000万円で売った土地をBに2000万円で買うのは、Bからの支援を期待していたことを考慮しても、Bの行為には客観的に詐害性がある。さらに、Bはかねてから恨みを抱いているDに損害を与えようとしているから、主観的に詐害意思が強い。

  したがって、Bは「害することを知ってした」といえる。

⑷ AB間の契約は「財産権」たる甲を対象とする(424条2項)。さらに、DのAに対する所有権移転債権は契約④より「前の原因に基づいて生じたもの」(同条3項)である。DのAに対する債権は「強制執行により実現」(同上4項)できる。

⑸ BはDとの関係で背信的悪意者にあたり「第三者」(177条)にあたらないから、DはBに対して所有権を対抗できる。しかし、所有権に基づく物権的請求か詐害行為取消請求かは、権利者が選択できるから、424条の請求を排斥しない。さらに、本件ではCが絶対的構成により保護されるから、424条の請求を認める必要性がある。

⑹ したがって、Bに対して上記請求ができる。

3 Cは「債務者がした行為が債権者を害することを知っていた」か。

  Cは、契約⑤の締結に当たり、契約③の存在やAが充分な資力を有していないことについてBから説明を受けていたのだから、Cは詐害行為につき悪意であった。

  したがって、424条の5柱書・1号の要件は充足する。

4 しかし、424条の6第2項は財産の返還又は価格の償還の請求しか規定していないから、Dは自己に登記を移転できず、Aのもとに登記を移転できるにとどまる。

  よって、請求1は認められず、請求2だけ認められる。

第3、設問2

1 Fの請求3は、賃貸借契約に基づく賃料支払請求(601条)と構成できる。

2 ㋐の主張の根拠

⑴ Fは乙建物をGに賃貸借し、Gは乙「建物」につき「引渡し」を受けたので、借地借家法31条の「対抗要件を備えた」(605条の2第1項)。

⑵ 譲渡担保契約は当事者があえて所有権を移転させる形態の契約を選択した以上、同契約により対象物の所有権が譲渡担保権者に移転するといえるから、令和3年5月31日時点で「不動産が譲渡された」といえる。

⑶ Hは同年6月5日時点で「所有権の移転の登記」を備えたので、同時点で賃貸人たる地位がFからHに移動する。

⑷ Gはこれを根拠にFからの上記請求を拒否する。

3 Fの反論とその当否

⑴ 主張㋑は、譲渡担保契約をしても、Fには使用収益権が残っているので、「譲渡」(605条の2第1項)にあたらないというFの反論である。

ア 605条の2の趣旨は、賃貸借契約は不動産の所有者はその者の個性に関係なく、使用収益権を有していることで賃借人に対して賃借義務を履行できることから、所有権の譲渡と対抗要件の具備があった場合に、賃貸人たる地位の移転も認める点にある。したがって、所有権が移転したとしても、使用収益権が前主に残存しているなら前主が賃借義務を履行できるといえ、後主に賃貸人たる地位は移転しない。

イ 譲渡担保契約においてはFに弁済期到来まで使用収益権が留保される。一方、弁済期が経過すると譲渡担保設定者たるFは使用収益権を失う。したがって、Fは弁済期が経過する令和5年5月までは乙建物の使用収益権を有するとともに、賃貸人たる地位も有する。

ウ したがって、Fの請求は5月分の賃料の請求のみ認められる。

⑵ 主張㋒は、FH間の使用収益権の留保により「賃貸人たる地位」がFに「留保」(同条2項)されているというFの反論である。

ア 譲渡担保契約は使用収益権を譲渡人に留保するが、賃貸人たる地位は使用収益権に依存する。したがって、使用収益権が留保されている限り、賃貸人たる地位も譲渡人に留保されるといえるから、弁済期経過までは「賃貸人たる地位」が譲渡人に「留保」される。

イ したがって、上記⑴と同様に、Fは5月分の請求のみ認められる。

4 よって、Fの請求は5月分のみ認められる。

第4、設問3

1 Mは、KM間における死因贈与(554条)契約に基づいて生じたKの所有権移転登記債務が、Kの死亡によりLに相続された(882条・896条・887条1項)として、Lに所有権移転登記手続請求をする。

2 Lの主張㋓は、「丙不動産をMに与える」という死因贈与が「丙不動産をN県に遺贈する」という遺言と「抵触」することを理由にこれが撤回された(1023条1項、1022条)とするものである。

3 ここで、死因贈与においては遺言の規定が準用されるものの、その方式については適用されないので1023条・1022条は適用されない。

4 よって、主張㋓は認めれれず、Mの請求が認められる。