再現フレンズ

司法試験系の論文試験の再現答案をあげるよ

ロー入試不合格体験記

【はじめに】

 僕は、数年前、多数の生徒がロー進学し、中央ローに落ちるなんてやばいみたいな風潮の大学に通っていましたが、見事に中央ローに落ちました。そのときは、1週間で10キロ痩せるなど、精神的にどん底の状態にありましたが、当時の先輩やTwitterのフォロワーさんなどにアドバイスをもらいなんとか都立ローに拾ってもらったのでした。

 当記事は、これからロー入試の勉強をする方への方針検討や自分への更なる反省のための不合格体験記です。

 まだ、司法試験に合格しておらず、うまくいったとはいえませんが、どんなところがダメだったのかを列挙し、どうよくなった(気がするのか)を記載していきます。

 

【ロー入試の反省】

・方法論の一本食い

 僕はロー入試前までは、中村充先生の4A講座(現4S講座)で勉強してました。中村先生は、パンデクテン方式を使った条文の探し方・二当事者対立構造を通じた法的問題点の抽出・法的な思考プロセスなど、普通の予備校では教えてくれないがプロは自然にやっている基本的な思考手順を言語化し教えてくれました。

 ただ、問題点があり、中村先生は①三段論法を重視せず②法理論を詳しく教えてくれず③あてはめがかなりフリーハンドです。

 

①について:三段論法が必須だとは言えないような気がしますが、相対評価の試験である以上、みんなが三段論法で書くなら三段論法で書く方が安全だと思います。さらに、東大法学部出身の中村先生はやはり日本語がわかりやすく美しいです。日本語に自信がない人は三段論法を使って雰囲気イケメンを狙った方がいいのではないでしょうか。僕は日本語能力が中村先生ほどありませんでした。

②について:法理論は入り込みすぎると樹海に入ってしまうので、初学者段階で法理論を勉強していたら確かにダメだったと思います。しかし、ある程度勉強したなら、基本刑法ぐらいの基本書を読んでみた方が、法律知識が有機的につながります。僕は刑法総論については、基本刑法を読んでみた結果、(結局は”結果への因果性”を聞いているだけなのかな?)というぐらいにまとめることができ、だいたいの問題はそこから考えれば結構なんとかなった感覚です。

 また、司法試験では現場思考で”趣旨→規範→あてはめ”をすべて自分で考える場面があるので、法理論の考え方をどこかの段階で身につけないと手も足もでないと考えます。実際、基本書を読んでからこのでっちあげ能力が向上した気がします。ただ、基本書だけ読んでも有害になってしまうのが受験界の通説なので、加減が重要なのかもしれないです。僕は、法理論の勉強をしなければいけないセンスのない人間でした。

③について:あてはめはある程度、定型化した方が時間短縮や点数向上につながります。強制処分なら”制約利益→同利益が憲法35条で保護されるほど重要な私的利益か→同利益に大ダメージがあるほど実質的に制約されているか”という手順であてはめています。任意捜査は”犯罪の重大性や特徴→被疑者への嫌疑→捜査の具体的必要性→被侵害利益の重さと必要性を比較した相当性”という手順であてはめています。

 このようにあてはめは定型化しておいた方が問題文を読みながら重要な事実を拾いやすかったし、答案を書くときも書きやすかったです。僕は定型化しないとその場で説得的に論述できない地頭の悪い人間でした。

 

 僕にとっては、4Aには上記問題点が存在していました。したがって、僕にとっては上記問題点を解決するために4A以外で勉強をする必要があったということになります。そのため、ロー入試後は上記問題点を解決してくれそうな”加藤ゼミナール”の講座をとったのでした。

 

・暗記の軽視

 僕が、法律を大学受験までの科目に例えると”英語と国語のブレンド”です。

 

 余談ですが、よく法律を数学という人がいますが、数学ってこんなにガバガバですかね?僕は、法律は数学・科学に近いものだと勘違いしていたからこそ失敗したと考えています。法律は事実を理論に代入すると特定の結論を出す装置(数学・科学でいう数式や定理)ではなく、好ましい結論を出すために説得的に論じる道具だと考えます。そのため、法律は結論よりも結論を導くまでの説得力の高さが重視されている学問で、それを立証するものとして令和3年の刑事系トップは正解筋と異なる結論をとっています。

 

 話を戻しますが、僕は最初に法律を勉強したとき”善意・悪意”や”第三者”の意義は意味不明で、都度に翻訳する必要がありました。さらに問題文に列挙されている事実もなぜ書いてあるのか意味不明でした。このように法律は外国語に似ています。法律の事例を読み解くには、英語の単語を暗記して長文を読むように、法律用語の定義を暗記して事例を読まなければ本当に意味がわからないです。

 さらに厄介なのは、日本語としての意味はわかるところです。ですが、法律のプロの方(作問者)は法律的に意味のある事実を問題文に振りまいているので、法律用語を理解して法律的に重要な事実を抽出しなければ、法律文書を読んだことにはならないです。日本語で書かれてはいるが、日本語とは違う言語についての問題が法律の問題だと思います。

 上記のように暗記した用語を利用して事実を抽出したら、三段論法や主述の一致などの国語の能力を使って答案を書きます。このような点から僕は法律は”英語と国語のブレンド”だと考えました。

 

 以上の点からそもそも用語や規範を暗記しなければ、問題文が”法律的に”うまく読めません(少なくとも僕は読めてなかった)。したがって、暗記は嫌でも必須なものです。付合の定義、弁論主義3つ、原告適格、処分性の講学上の要件など、暗記しないとどうしようもない知識は暗記した方がいいと思います。

 

 なお、僕は司法試験受験まで本当に暗記が間に合っておらず、原告適格の規範や94条2項類推などの規範はさすがにキッチリかけましたが、訴因変更の要否とかの規範・あてはめはかなりグラついてしまいました。この点は反省を活かせなかったこととして今も反省してます。

 

 ・三段論法の軽視

 方法論の一本食いでも述べましたが、三段論法を軽視していました。法律の問題は説得的な文章を書く能力が一番試されているはずですので、日本語能力がないなら三段論法というレトリック使わざるを得ません。

 ロー入試不合格時においても、皆さんが共通して注意してくれたのはこの三段論法でした。

 

 一応、三段論法のやり方について説明しておきます。間違っているかもしれないので、詳しくはプロの方に聞いてください。

①三段論法は、大枠として【抽象論→具体論→結論】という順で進みます。

②抽象論は、判例の規範や定義など論証集に書いてあることです。この部分は事前の暗記や理解が必要になります。

③具体論は、抽象論の知識を前提に問題文から抽出した事実を規範にあてはめる論述箇所です。“❶抽出した事実の適示→❷評価→❸規範のリフレイン”の順に論述し、説得的な文章を書きます。

④結論は、結論です(新次郎構文)。

※抽象論の前に、問題の所在を挙げる説明もあります。

 

以上の説明を具体化すると94条2項類推の論点はこう論じることになるはずです。

ア ①虚偽の外観、②真の権利者の帰責性、③第三者の信頼があれば権利外観法理が妥当して94条2項が類推できることを抽象論として提示。

イ ”所有権を有しないBの甲土地についての所有権移転登記の存在という①虚偽の外観”等のあてはめをする。

(このとき、”虚偽の外観”という規範をもう一回書くと説得力が増すらしい≒規範のリフレイン)

ウ 類推できるなどの結論

 

 昔の記事を見ると三段論法の重要性を全く理解しておらず、笑えます。

 

【なにが変わったか】

・方法論は道具にすぎず、どのように勉強するかは人によるかもと思うようになる

 どのような方法論も結局は道具にすぎませんでした。方法論にこだわるのではなく、いま何が自分に必要なのかを考えるべきでした。

 何が自分の課題かを見つけるにおいて重要なのは、答案を複数の人に見てもらい、共通して注意されることを見つけることです。添削で見つかった僕にとっての共通注意事項は三段論法や法律用語の暗記でした。

 さらに、自分に必要な方法は一度方法論を試してみないとわかりません。コロコロ方法を変えるのは初学者のうちはよくないですが、成績が伸びなかったり答案を見てもらってダメだといわれたならば、いろいろ試してみてください。

 

・法理論をしっかり勉強すると法律が楽しい

 法理論をしっかり理解しようと努力したところ、知識が有機的に繋がって法律が好きになりました。ロー入試前は法律は全く好きではなく、問題文を処理するために4Aのパターンを勉強して、ただただ試験問題を処理するために勉強していたので勉強が無味乾燥したので、勉強が苦痛でしかなかったです。

 予備校の指導で問題はそれなりに解けるが楽しくないという方は、基本刑法などのわかりやすい基本書を一度読んでみたらいかがでしょうか?(時間があれば・・・)

 

・暗記をそれなりにやると問題文が早く読める

 暗記するとどの事実が重要なのかわかり、問題文を読むときの力の出し入れがうまくできて長い文章題をよむのも疲れにくくなりました。

 

・三段論法を守ると説得的な文章がラクに書ける

 日本語能力の低い僕は、三段論法を用いることで、ローの学者の先生にも「簡潔でわかりやすい論理的文章を書くことができている」との言葉を何度も頂きました。特に4S出身の人で成績が伸びない方は三段論法を使ってみてはいかがでしょうか。

 

 僕は、処理手順をパターン化するととても安心します。とりあえず、抽象論から書こう~~って思ってすぐ手を動かすことができるのはとても心地よかったです。

 

 この記事は以上です。僕の失敗を参考にしてくだされば幸いです。

 また、司法試験不合格の際は、このような反省をもう一度したいと思います。