再現フレンズ

司法試験系の論文試験の再現答案をあげるよ

明治ロー 2020年度 刑法 再現答案

問題1

【設問1】

1.甲のVの顔面を右手拳で思いっきり殴った行為1に傷害致死罪(205条)が成立しないか。

⑴結果加重犯は加重結果発生する類型的危険が大きい基本犯を強く禁圧する点にあるので、基本犯と加重結果に因果関係があればよい。

⑵甲は男性であり、身長175cm、体重70kgという比較的大柄なので行為1は不法な有形力行使である「暴行」(208条)にあたる。

甲は殴りかかられたのに怒っていたことやその行為態様から故意もある。

⑶Vは殴られて仰向けに転倒し、後頭部をコンクリートの床に強く打ちつけ、その結果、Vは脳挫傷を負って3日後に「死亡」(205条)した。

そのため、構成要件に該当する。

2.しかし、行為1には正当防衛(36条1項)が成立しないか。

⑴Vは後ろから追いかけ殴りかかってきたので、急迫性がある。さらに、Vの殴りかかってきた行為は暴行罪(208条)にあたる「不正の侵害」である。

⑵甲は自分の身体という「自己の〜権利」を「防衛するため」に行為1をしたし、Vに怒っていたという併存的意思があっても問題ない。

⑶甲は一度Vの手拳を避けているが、足下がふらつくほど酔っているVはまた暴行してくるかもしれないから行為1は必要である。甲はVが転倒し脳挫傷を起こすほど思いっきり殴っているので相当とはいえないので相当といえす、「やむを得ず」とはいえない。

3.よって、同罪が成立し、刑は過剰防衛として減免される(36条2項)

【設問2】

1.甲の行為1に正当防衛が成立するか。

⑴Vは甲を殴るつもりはなく、店の外にあるトイレに行こうとして甲に通路を開けさせるために右手をあげただけなので、「不正の侵害」がない。

⑵ここで、故意責任の本質は規範に直面したのにあえて行為をしたことに対する非難にある。本件では、甲は正当防衛が成立すると考え、行為1をしたので規範に直面していない。

2.よって、設問1と同様に傷害致死罪が成立し、過剰防衛として刑が減免される。

問題2

1.乙のC所有の絵画をC宅から持ち出し、乙が使用している倉庫に隠した行為1に窃盗罪(235条)が成立しないか。

⑴絵画はCの所有する「他人の財物」であり、行為1はCの意思に反する占有移転であるので、「窃取」の実行行為にあたる。

⑵しかし、行為1に不法領得の意思はあるか。

不法領得の意思とは、①不可罰な使用窃盗や②軽い毀棄隠匿罪を区別するため、①所有者を排除し他人の物を自己の所有物として②その経済的用法に従い利用・処分する意思である。

ア.乙の行為1によりCは絵画を使用できなくなっているので①の意思はある。

イ.乙は、はじめ恨みを抱いているCを困らせる目的で行為1をしたから、経済的用法に従ってないように思えるが、一か月後に返そうとしたのを気が変わって返さないままにしたので②経済的用法に従って処分したとえる。

⑷よって、乙の行為に同罪が成立する。

以上