中央ロー 2020年度 商法 再現答案
○答案 56/80点
第1.設問⑴
1.⑴Aの乙銀行からの5億の借り入れは「多額の借財」(会社法362条4項2号)にあたらないか。あたるとすれば、取締役に執行決定を委任できず、取締役会による決議が必要である。(同条項柱書)
甲社の資本金は1億円であるため、その5倍にも及ぶ5億円は「多額」といえる
⑵しかし、Aは代表取締役としてこのまま借り入れをした場合、「表意者」である甲社が「真意でないことを知ってした」という心裡留保類似(民法93条本文)の状態になる。
とすると、「相手方」の乙銀行が悪意でない限り(同条但書)、借入れが無効になってしまうから取締役会の決議をやはり必要とする。
2.とするとAは、本件借入れの決議をしてもらうため、取締役会を招集(会社法366条1項)し、そのために招集通知(368条)などの手続きをする必要がある。
第2.設問⑵
1.①効力発生前について
⑴Qは「株主」として本件募集株式発行をやめるよう請求できないか(210条)
Qは、募集株式発行により持株比率の低下や株価下落などの「不利益を受けるおそれがある」ため、同条各号にあたれば上記請求は認められる。
⑵本件では資金調達目的以外の目的による発行がなされたとの事情はないので、「著しく不公正な方法」(2号)にはあたらない。
一方、P社は非公開会社であるから201条1項の特則が適用されない。それなのに、取締役会だけで株式発行と募集事項を決定しており、株主総会を開いていないので、199条2項という「法令」に「違反」する(1号)
⑶よって、Qの請求は認められ、本件募集株式発行を差し止めできる。
2.②効力発生後について
⑴QはP社「株主」(828条2項2号)として本件募集株式の無効を主張できないか(同条1項2号)
同条の無効原因は取引の安全を図るため、重大な「法令又は定款」(210条1号参照)違反に限られる。
確かに、本件募集株式発行は199条2項という「法令」に反していたが、議決がないことは内部的事情に過ぎず重大とまではいかない。
⑵よって、Qの主張は認められない。
以上
○感想
⑴は多額の借財を認定した後、無効にしないため何をしとけばいいの?という会社法でよくある手段問題です。
⑵と配点が1:1なのが気になりましたが、あまり手段は思いつかなかったので最低限のことしか書けませんでした。
⑵もよくあるやつですね。あんまり書くことないです。
処理量が一番少ない科目のような気がします。
民法に時間割きました。