再現フレンズ

司法試験系の論文試験の再現答案をあげるよ

令和4年司法試験 行政法 再現答案(原告適格再現せず)

行政法 再現答案(公法系科目115.76 憲法A行政A)

(全部で5枚?設問1で2枚、設問2で0.7枚、設問3で2.5枚くらい。一行最大32、平均25)

 

第1、設問1

1 E及びFは本件申請に係る許可という「処分」の「相手方以外の者」であるから、「法律上の利益を有する者」にあたらない限り、原告適格は認められない(行訴法9条1項)。

2 「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利または法律上保護された利益を侵害され、または必然的に侵害されるおそれのあるものをいう。当該処分の根拠規定が、不特定多数者の具体的利益を個々人の個別的利益として保護する趣旨を含む場合、当該利益は法律上保護された利益にあたる。

3 水害や災害により生命・身体・財産を侵害されない利益

 

4 生活用水を確保する利益

 

第2、設問2

1 訴えの利益(9条1項かっこ書き)が認められるには、原告において取消訴訟により得られる法律上の利益が存在することが必要である。

2 昭和59年判決は、建物完成後に建築確認をしても建物の違法性の除去などにつながらないことから、訴えの利益を否定した。

3 本件では、開発行為が終了した場合には、許可自体を取り消してもこれによって法律上の利益は保護されない。しかし、法10条の2の許可が取り消されれば、10条の3に基づいて監督処分をすることができるから、この点で取消訴訟により得られる法律上の利益が存在する。

4 よって、Fに訴えの利益が認められる。

第3、設問3

Fによる違法事由の主張

1 本件申請の許可についてはB県知事に裁量を認めざるを得ない。

  しかし、以下の理由からB県知事には裁量処分の判断過程が合理性を欠き、その結果裁量処分が著しく妥当を欠くため、許可が違法となる(行訴法30条)

2⑴ まず、本件許可基準は不合理なので、基準にしたがった処分は他事考慮にあたる。

   基準が合理的だとしても、拘束力まではないから基準のみに従うのは考慮不尽である。

   基準に拘束力があるとしても、個別事情を考慮しないのは考慮不尽である。

 ⑵ 本件認定は適法なものであり、それに従った処分をすべきなのにこれを考慮しないことは考慮不尽にあたる。

B県の反論

1 行政裁量の有無は、法律の文言と処分の性質の両面を考慮して判断する。

  本件申請に係る許可は法10条の2第1・2項を根拠とするが同条文の要件となる文言は抽象的な文言であり、その理由は開発行為をする際は地域の実情にあわせて専門技術的判断や公益の考慮をする必要があるからである。

  したがって、本件申請に係る許可にはB県知事に行政裁量が認められ、以下の理由から上記許可は適法である。

2⑴ ここで裁量基準たる本件許可基準は合理的なものであるから、これを考慮しても多事考慮にあたらず、裁量の逸脱・濫用にならない。

   法1条と法10条の2第3項に規定する「森林の保続培養」とは、森林の無秩序な開発により森林の持つ機能発揮を阻害しないように、合理的かつ計画的に森林を維持改善することをいうから、許可においてはこの点を目的として判断がされる。

   本件許可基準1-1-①が、開発区域内の私法上の権限を有するものすべてではなく、3分の2以上の権利者の同意でよいとするのは、申請者に過度な負担を課さないようにするためである。これは、合理的かつ計画的に森林を維持改善するという法の趣旨に合致する。

   したがって、本件許可基準は合理的であり考慮できる。

 ⑵ さらに、公表されている裁量基準については国民との間でも行政庁を拘束する。

   裁量基準は、行政の内部基準に過ぎず外的効果を有しないのが原則であるが、それが公表されている場合には公正・平等取り扱いや信頼の原則の要請がある。

   したがって、公表された裁量基準は、平等原則や信義則の法原則を媒介に、国民との間でも行政庁を拘束し、同基準と異なる扱いをすべき特段の事情のない限り、基準と異なる取り扱いをすることは他事考慮として裁量の逸脱濫用となる。

   そのため、3分の2以上の権利者が同意していれば許可するのは裁量の逸脱・濫用にならない。

 ⑶ 3分の2以上の権利者が合意していれば合理的かつ計画的に森林を維持できるし、反対に権利者の数以外を考慮するとあまりにも申請者に負担になって上記のような森林維持をできなくなる。

   したがって、基準と異なる扱いをすべき特段の事情となる個別考慮事情はなく、考慮不尽はないので裁量の逸脱・濫用はない。

3⑴ 法の趣旨・目的は、合理的かつ計画的に森林を維持改善することである。

   しかし、本件認定は本件計画の阻止を意図してされたものだから、上記趣旨・目的に反する。

   したがって、本件認定は違法なものであり考慮できない。

 ⑵ よって、本件認定を考慮しなくても考慮不尽にならず、裁量の逸脱・濫用は認められない。

4 よって、裁量の逸脱・濫用はないので、本件許可は適法である。

 

 

 

 

令和4年司法試験 憲法 再現答案

憲法 再現答案(公法系科目115.76 憲法A行政A)

(全体で7枚ちょうどくらい。設問1で3.7、設問2で3.3。一行あたり最大32文字、平均25文字)

第1、設問1

決定①

1 憲法23条違反について

⑴ 憲法23条は、研究活動の自由を学問の自由として保障する。

ここで、上記自由は自由権としての性質しかなく、請求権としての性質を有さない。

したがって、Yの助成金を受給する自由は請求権的性質を有するので、23条で保障されない。

⑵ Yの上記自由が憲法23条で保障されるとしても、制約が正当化される。

ア まず、助成金自由権として保障されるとしても、大学側の決定した支給に基づくものであることには変わりないから、請求権的性質を否定できず権利としての要保護性が低い。

 X大学には大学の自治が認められているから、制約につき裁量が認められている。

 X大学は、Yの研究内容に着目するのではなく、助成金の公正な利用という目的で制約をしているのだから制約態様が弱い。

 したがって、目的が正当で、目的と手段に合理的関連性があれば、決定①が正当化される。

イ (ア)決定①は助成金の公正な利用を目的としているから、目的は正当である。

  (イ)Yは、ウェブサイト「Y研究所」の運営の委託及び実地調査のための国内各地への出張に研究助成金の3分の2以上が支出されているが、ウェブサイトは研究結果の発信のほかにYの政治的意見の表明や団体Cの活動のためにも利用されている。このような実体からすると、Yは助成金を研究活動のためではなく、政治活動として支出しているから、Yの助成金の支出は助成金の公正な利用を阻害する。

     また、出張に際しては、Yが、団体Cと連携して活動している各地の団体に聞き取り調査を行うだけでなく、それらの団体が主催する学習会でX県の産業政策を批判する講演を無報酬で行っていることが明らかになった。この事情から、Yは助成金を利用して、自身の政治活動を付随して行っているといえるから、Yの助成金の支出は助成金の公正な利用を阻害する。

 したがって、Yに助成金を支出しないことは、目的を促進する手段として適合性がある。

ウ よって、決定①は、目的が正当で目的と手段に合理的関連性があるので、合憲である。

2 14条違反について

⑴ Yは、A研究所ではこれまでに研究員に研究助成が認められなかった例はなく、優れた研究成果を上げてきた自分にだけ助成が得られないと主張しているが、これまでの研究員に助成金が認められていたのは助成金を受給するにふさわしかったからであり、Yとの間では事実上の区別があったに過ぎない。

 したがって、そもそも14条1項の検討対象となる別異取り扱いがない。

⑵ 別異取り扱いがあるとしても、合理的理由に基づく差別なので合憲である。

 差別の合理的理由の審査の厳格度は、事柄の性質によって変わり得る。

ア まず、決定①は助成金の不正な利用に着目した差別だから、学問的な「信条」を理由とした差別ではない。

 さらに助成金がなくても、研究活動を続けることはできるので、差別によって重要な利益が失われるわけではない。

 したがって、目的が正当で目的と手段に合理的関連性があれば決定①は合憲である。

イ(ア) 差別の目的は、助成金の公正な利用であるから、正当といえる。

 (イ) Yは助成金の公正な利用を阻害する。決定①は、その他の公正な助成金の利用をしている研究員とYを差別することにより上記目的を達成できる。したがって、決定①には手段適合性がある。

したがって、目的と手段に合理的関連性がある。

⑶ よって、決定①は合憲である。

決定②

1 憲法23条の学問の自由は、教授の自由を保障する。成績評価の自由は、学問の内容自体ではなく、テストやレポートの採点の結果としてなされる自由だから、教授の自由に含まれない。

 したがって、Yの自由は憲法23条で保障されない。

2 また、憲法23条で保障されるとしても、制約が正当化される。

⑴ 成績評価は学問の内容自体ではないので、権利の重要性が低い。さらに、成績評価には大学の自治が及ぶので制約には裁量が認められる。

  したがって、目的が正当で目的と手段に合理的関連性があれば、決定②は合憲である。

⑵ア 決定②の目的は生徒が公平に成績評価を受けることであるが、この目的は14条1項に沿うものであり重要といえる。

 イ Yは自身が担当した「地域経済論」の成績評価に対して、団体Cに加入した学生がいずれも「S」の最高評価を得ている一方で、期末試験の答案でブックレットの内容を批判した学生の多くが不合格の評価を受けているので、Yの成績評価は生徒に対する公平な成績評価という目的を阻害する。一方、決定②は再度、公平に成績評価をするものであり、目的を促進する。

   したがって、決定②には手段適合性がある。

 ウ そのため、決定②は目的が正当で目的と手段に合理的関連性がある。

3 よって、決定②は合憲である。

第2、設問2

Yからの反論

1 決定①

⑴ 23条

ア 助成金を受給する自由は自由権として23条で保障される。

イ 助成金を受給する権利は重要で、大学の自治による裁量の付与は認められないので、X大学の主張する審査基準は不当である。

ウ 決定①による制約は正当化されない。

⑵ 14条1項

ア 他の研究員との別異取り扱いは事実上のものではなく、差別がある。

イ Yは「信条」を理由に差別されているから、X大学の主張する審査基準の厳格度は不当である。

ウ 上記差別は合理的理由がなく、差別が許されない。

2 決定②

⑴ Yが成績評価をする自由は教授の自由として憲法23条で保障される。

⑵ 成績発表をする自由は重要な権利だから、X大学の主張する審査基準の厳格度は不当である。

⑶ Yの上記自由に対する制約は正当化されない。

私見

1 決定①

⑴ 23条

ア Yの助成金を受給する自由は憲法23条で保障されるか。

 助成金の受給は、X大学の給付決定を前提とした請求権である。ここで、学問の自由が保障された経緯は真理を探究するという学問の性質上、国家から弾圧されやすいため、これを防ぐ点にある。このことからすると、一度助成金を給付した場合に、不交付とするのは弾圧されやすい学問の自由を侵害しうるので、助成金を受給する自由は自由権として保障されるべきである。

 したがって、Yの自由は憲法23条で保障される。

イ(ア) 助成金が受給できないと学問研究を事実上できない状態になる場合もあるから、学問の自由の性質上、助成金を受給する権利は重要である。さらに、大学の自治は本来、学問の自由を手厚く保護する点にあるから、大学の自治を理由に学問の自由を制約する場合に裁量が広く認められることはない。

 (イ) したがって、決定①は目的が重要で目的と手段の間に実質的関連性が必要である。

ウ(ア) 決定①の目的は助成金の公正な利用にあるから目的は重要といえる。

 (イ) Yは自身が助成を得て行ってきた研究活動はすべて「地域経済の振興に資する研究活動を支援する」という助成の趣旨に沿ったものであると主張するが、助成の趣旨は学問的側面から地域経済の振興を図るというもので、政治的側面から同振興を図ろうとした場合、助成金の趣旨に反する。Yは助成金を自身の政治活動にも利用していたので、助成金が趣旨に反して利用されていたといえる。そのため、Yの助成金利用は目的を阻害する。

    決定①によりYが助成金を利用できないようにすれば、上記目的を促進できるので決定①は手段適合性がある。

   したがって、目的が重要で目的と手段に実質的関連性があるといえる。

エ よって、決定①は合憲である。

⑵ 14条1項

Yに助成金が交付されず、他の研究員が交付されていたのは、他の研究員が審査の結果として公正な助成金の利用をしていたと認められたからであり、差別は事実上のものにすぎない。

 したがって、差別自体がない。

2 決定②

⑴ 成績評価はそれ自体では教授の自由には含まれないものの、大学生は十分な批判能力を備えており講義内容などについて教員に広い裁量が認められていることからすれば、成績評価をして学問の内容を身につけていない生徒を不合格にすることで再び講義を受けさせて学問の内容を身につけさせることが、教授の自由の範囲に含まれるといえる。

 したがって、Yの成績評価をする自由は教授の自由に含まれ23条で保障される。

⑵ア 成績評価は学問の内容自体ではないが、学問の内容を確実に身につけさせるにおいて必要であるから権利の重要性が高い。さらに、大学の自治は学問の自由の保障のためのものだから、学問の自由を制約する際に大学の自治を根拠に裁量を認めることはできない。

 イ したがって、目的が重要で目的と手段の間に実質的関連性がある場合にのみ、決定②は合憲となる。

⑶ア 生徒間の成績評価の公平性は憲法14条1項の平等権に妥当する重要な目的である。

 イ ブックレットの論考はいずれもYの研究を踏まえた学問的な根拠に基づくものであって、それを十分な理由を示さず批判している答案を提出した生徒が不合格になっただけで、YはC団体に加入しない生徒に報復するために不合格にしたわけではない。団体Cに参加していた生徒はもともと社会問題に関心の高い学生が多いために、同生徒が好成績を収めただけで、Yが同生徒を優遇したわけではない。さらに、Yの講義では6割以上の学生が5段階中の4を取得しているから、不合格になった生徒は単に生徒が学修に熱心に取り組んでいなかっただけである。

   したがって、Yの成績評価は目的を阻害しないので、決定②には手段適合性がない。

 ウ したがって、目的は重要だが、目的と手段に実質的関連性がない。

⑷ よって、決定②は違憲である。

【随時追記予定】途中答案を防ぎた〜い

【はじめに】

 司法試験の論文式試験において、途中答案が大きく点を失ってしまう要因であることはあたりまえです。しかし、多くの受験生は様々な原因で途中答案を生み出してしまうのが現実であり、途中答案病を克服するだけでも相対評価で”落ちない”ようになると思います。

 僕は、論文の内容の良し悪しは別として、時間管理だけは得意であったという自負があります。予定通りの枚数を書き、いつも終了直前1~5分に答案を書き終えます。本番でも途中答案0でした。とはいえ、過去問解き始めの頃は途中答案を量産し、「わァ・・・!あ・・・!」っていう日々を過ごし、過去問を解くたびに病んでいました。

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(ここのハチワレなんで笑っとるん?)

 本記事では、僕の意識していることをまとめたうえで、途中答案している人の特徴をまとめていきます。

【意識していること】

★事前準備編★

・時計とカウントダウンのタイマーを必ず用意する

 時間管理をする際に時計しか使わない方がいますが、危ないと思います。

アナログ腕時計だと9時40分か10時40分かわからなくなりませんか?デジタル時計でも何時から試験が始まったのかをいちいち受験票を見て確認して計算するの、時間がもったいなくないですか?残り時間の計算はあってますか?受験票の試験時間はズラーっと8科目並んでますが、見間違えてないですか?

リスクが大きすぎます…

カウントダウンのタイマーを買いましょう。

 

 また、カウントダウンのタイマー単体で試験を受けるのも大きなリスクがあります。タイマーのボタンを試験開始時に押し忘れるというミスがあるからです。時計とタイマーの二つを用意して試験に臨んでください。

 

・一枚書くのにかかる枚数を把握しておく

 一枚書くのにかかる枚数を把握していなければ、答案構成にかけていい時間や論述作成にかけていい時間の計算ができません。枚数は答案の質や問題の内容にもよりますが、さすがに答案用紙4枚を切る問題はないと思います。

ここで、例えば、一枚15分なら4枚で60分かかり構成に1時間かけていいことになります。一枚20分なら4枚で80分かかり構成は40分しかかけられません。

 

 僕は一枚15分かかり、答案構成時間は原則30分(4分の1ルール)に限定していたので、書くことのできる最大枚数は原則6枚になります。最大枚数の枠を基準に、科目の特性・問題との相性・配点により構成の時間や答案の枚数を加減します。

この調整については何度も起案をして勘を鍛えることを要しますが、それ以前に自身の最大枚数の枠を把握し、あらかじめ枚数をコントロールする枠を決める必要があります。

 

 答案を一枚丸写ししてそのタイムを計測するだけでも構いませんので、自分が一枚にかかる枚数を把握しておいてください。

 

・科目ごとに書ける枚数を把握する

 科目ごとに最大枚数は違います。

民訴の難しい理論の問題は理論の組み立てに恐ろしく時間がかかりますので構成に1時間要することもあり、枚数が4枚程度になりがちです。一方、刑法は、検討項目の多さ・事実を拾って評価することの重要性・答案構成の容易性から、枚数は6枚以上がデフォです。

 原則最大枚数の枠は科目ごとに決める必要があります。この枠を調べるには8科目の過去問の起案を何回かする必要があります。起案を通じて科目ごとに何枚書けるかがわかってきます。

 

・三段論法を体に叩き込む

 三段論法は法律文書としての体裁を保つという機能以外にも、起案の流れを安定させるという機能もあります。

抽象論と具体論をひとつのブロックに混ぜてしまうと、頭がごちゃこちゃになり文章の生成速度も遅くなりますし、文章が長くなって変に時間がかかります。

三段論法を安定してかけるようになると、順序よく論述をすることができルーティーンにより生ずる精神的安定を得ることにもなります。三段論法を身につけた方が途中答案になりにくいです。

 

・短い規範を用意する

 規範の長さはその人が書くことのできる枚数に比例して調整しておく必要があります。

 規範(特に規範の理由づけをいう)においてもその論理性が評価対象になるとは思います。しかし、規範においては学説も様々で、多くの論理的対立が見られることから、すべての採点者を納得させる規範を論述することは難しいはずです。

したがって、自分の書ける分量にあわせて規範を調整しておく必要があります。論証集でキーワードを抽出して規範の表現をできるだけ短くしたりマストではない理由付けを丸ごと削ります。

 論証の削り方については加藤先生のこちらの記事やあいかわ先生のこちらの商品を参照して論証を削っていくといいと思います。

 

・規範のキーワードを条件反射で出るようにする

 規範を思い出す時間は非常にもったいないです。その間に事実を一つでも多く拾ったり、構成に時間を費やしたりできます。規範の暗記は非常に辛いし、僕も試験までに規範を全部覚えることができてません。ここは普段から暗記の努力をするしかないです。

 

・あてはめを定型化する

 三段論法を組めば、規範を論述するまでは規範を覚えてさえいればスムーズに書けます。ですが、あてはめでどんな事情を引っ張ってくるべきか迷っていると論述が遅くなります。特に、抽象論と異なりそのまま文字を書くだけでは済まないあてはめ部分は、抽象論より迷いが生じやすく時間のロスが多いです。

 そこで、あてはめるべき事情はある程度覚えておく必要があります。たまーに判例で指摘される下位規範というものがここでいうあてはめるべき事情と一致します。ですが、強制処分任意処分の論点、処分性の論点、民法の過失のあてはめなどは下位規範がないです。

 

このような論点においては、あてはめる事情を下位規範として記憶します。

 

❶強制処分任意処分の論点⇒強制処分(被侵害利益の特定、同利益が憲法35条の権利に匹敵するか、同利益が実質的に侵害されているか)、任意処分(犯罪の重大性、被疑者への嫌疑、捜査の抽象的・具体的必要性、被侵害利益と捜査の必要性との比較)

❷処分性の論点⇒公権力性(行為主体、法令上の根拠)直接具体的法効果性(私人の権利地位に対する影響、影響を受ける地位が法的なものか、影響が法令で予定されていたものか)

民法の過失のあてはめ⇒不審事由調査義務の内容確定実際の履行と調査義務の比較

 

 ロースクールに入ったあと過去問を解いたときの一番の悩みはあてはめをどうやればいいかわからないということでした。過去問を解くのはいいものの複雑な事例・誘導や大量の事情をみて、どうペンを動かせばいいのかわからなかったです。特に司法試験は聞かれている論点自体は明白だが、どう論述すればいいのかわからないという問題が多いです。

 

 それは上記のように下位規範や論点ごとのあてはめの手順をわかっていないからです。

ロー突破段階で司法試験の起案をして途中答案をする人はここが発展途上なのではないかと予想しています。

予備校や参考書を見てあてはめるべき事情を把握しておけば、問題文を読む段階であてはめるべき事情を拾うことができますし、あてはめの論述をするときもスムーズに論述できます。

 

 もうひとつ具体例を挙げます。以下は平成29年行政法の誘導部分の文章です。同問題では市道の路線廃止が処分にあたるかが問われています。

「弁護士E:本件市道の路線の廃止取消訴訟の対象となる処分に当たるか否かが問題となりますね。
弁護士D:そうですね。この問題を検討するに当たっては,市町村道の路線の廃止が道路敷地の所有者及び通行者の法的地位にどのような影響を及ぼすかを検討して,それが処分に当たるか否かを明らかにする必要があります。市町村道は,路線の認定,そして道路の区域の決定という過程を経た上で供用が開始されます。また,Y市が検討している路線の廃止は,道路自体の消滅を意味するものであって,これにより,当該路線について定められていた道路の区域や,当該道路についてされていた供用行為も自動的に消滅することとなると理解されています。ですから,本件市道の路線の廃止に係る処分性の有無を検討するためには,道路の区域の決定及び供用の開始が,道路敷地の所有者及び通行者の法的地位に対してどのような影響を及ぼすかについても検討する必要がありそうです。」

なぜ、本問では廃止の処分性が聞かれているのに、開始の法的効果が問われているのでしょうか?

それは、開始によって生じた法的効果が廃止によって消滅するかどうかを聞いているからです。法的効果を消滅させるのも法的効果ですが、消滅の法的効果を証明するには法的効果がもともとあったことを論述する必要があります。

上記誘導にもそんなニュアンスのことは書かれていますが、緊張している本番で事前知識なしに上記誘導を読んでもそんなニュアンスはわかりません。

事前知識がない結果、誘導の理解に多くの時間をかけ、意味不明なまま論述しはじめ、あてはめ部分であれ違うんじゃ?と考えだし、迷走して時間だけが過ぎていく・・・。あてはめのやり方を覚えないと、こんなことになります(僕はなりました)。

 

そこで下位規範やあてはめのコツを事前に記憶しておく必要があります。

 

蛇足ですが、上記誘導が何を言っているのか理解するには処分性のあてはめの2つのコツを理解する必要があります。

1つ目は、”下位規範として法効果性を考慮すべき”というコツ。2つ目は、”出口の法的効果を考えるときはまず入口の法的効果から考える”というコツです。これらのコツを理解すれば上記誘導を素早く理解できます。論述についても「供用開始の法的効果性の検討→廃止によって同効果が消滅→処分性がある」の順で論じるという方針を立てて、スムーズな論述をすることが可能です。

 

 ここらへんのあてはめのコツの参照文献については僕はすべて加藤ゼミナールに任せていました。

 

★試験本番編★

・自分の最大答案枚数の枠内で答案を作成する

 最大答案枚数の枠はどちらかというと物理的な要素(男性の方が手に筋力がある)や地頭的な要素(構成を脳内でして記憶しておける、短期記憶が強い)に依存しがちです。

したがって、この枠を問題ごとに変動させた場合、途中答案のリスクが跳ね上がります。そもそも無理なことだからです。

 

 ですから、途中答案を連発してしまう人は事前に確定した最大答案枚数の枠を超えないように答案を作成する必要があります。5枚しかかけないなら、5枚を設問の配点で割り算して、その枚数に収まるように答案を作成します。そうすると、答案構成時にイメージした枚数と実際に書いた枚数が一致します。

 

・配点を基準に設問ごとの枚数を確定

 問題によっては設問ごとの配点が記載されています。 

設問1(40点)設問2(60点)であれば、最大答案枚数が5枚の人であれば設問1で2枚、設問2で3枚しか書いちゃいけません。

特に、設問1で有名論点が出た場合に設問1で3枚とか書くのはやめてください。絶対に事故になります。

司法試験は総合点で勝負する試験ですし、相対評価の試験でもあります。設問1で頑張ってたくさん書いても採点表の枠内のMAXの点数しかとれません。設問1で8割・設問2で3割よりも設問1で6割・設問2で6割の方が楽に取れます。

書きたいことを我慢するという技術も非常に重要だと思います。

設問の配点の記載がなければ、設問の個数で割り算します。

 

・答案プリンター状態にする

 途中答案になる原因の一つとして答案構成がしっかりできていないという点が考えられます。

”論理構成ができていないのに書き始める→後から論理破綻して書き直す”

”処理能力が低いのにあてはめで使う事情をメモしない→いちいち問題文を読み直す”

行政法の誘導を一元化しない→論述中に難しい誘導をまた読む”

”当事者を図で整理しない→当事者を取り違えて書き直す”

これらの時間ロスは答案構成をしっかりやれば防げます。

構成後はただ頭にある規範と問題文にある事情とストックしていた評価を書き写すだけでOKという状態まで答案を構成すればプリンター状態になれます。

 

答案構成をどこまでやるかについては自身の処理能力にあわせて変動します。全くしなくてもいい人もいるし、事情を段落行数だけでいいのでメモしなくてはならない人もいます。変に焦って構成して崩壊するより丁寧に構成して理路整然とした論述をした方がいいので、事務処理能力に自信がない人は丁寧に構成してください。

 

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よくわからないときはこのくらい構成してます。今年の商法の設問1です。

4A図を基盤に答案構成しているので、上から書いていけば自然に「当事者→主張→請求→要件検討→論証→あてはめ」の順になります。左右の比較で主張反論の組み合わせができます。

 

以下のような見方

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・短文、単文、淡文

 短文(短く書く)、単文(1センテンス1ミーニング)、淡文(凝った表現を用いない)の意味です。辰巳の論証集に書いてありました。

 よくみる悪い文章として「〇〇は〇〇であるところ、本件では〇〇なので〇〇であるが、〇〇は〇〇であるので、〇〇との結論が考えられる」という文章です。伝わりにくいだけでなく、主述が何個も出てきて頭がごちゃこちゃになりがちな表現方法です。頭がゴチャゴチャになると答案作成スピードが遅くなり途中答案リスクがあがります。

「〇〇は〇〇である。本件では〇〇なので〇〇である。しかし、〇〇は〇〇であるので、〇〇との結論が考えられる。」というように、こまめに文章をちぎってください(ロー同期は1文2行を超えないようにしていると言ってました)。

 

・最初の問題やわかる問題で書きすぎるのを我慢する

 答案の分量は【設問の配点・自分の最大答案枚数の枠】で決まるもので、自分が書きたい量で決まるものではありません。自分の書ける量で決まります。最初の問題やわかる問題でたくさん書いて尻切れトンボになるのではなく、すべての設問で満遍ない量を書くことで途中答案を防止できます。

 

・時間を確認し、状況に応じて枚数を変動

 答案構成に時間がかかってしまったときや最初の設問の起案に時間をかけすぎてしまったときは、設問を解くごとに残りの設問にかけていい枚数を再計算します。

時間通りに答案作成をできなかったときは、とりあえず起案中は途中答案を防ぐことだけに全力を注ぐべきです。

 

例えば、設問1(25点)、設問2(25点)、設問3(25点)、設問4(25点)とします。

 

構成に30分かけた場合、残りの90分を4で割って、設問ごとにかけていい時間は約22分です。設問ごとに書いていい枚数は1.5枚です。

原則はこの計算に従い起案します。

 

ですが、緊張や設問の難易度から設問1・2を書き終わった時点で残り時間30分だったとします。

そしたら、計算をし直して30分を残りの設問2問分で割ります。設問ごとにかけていい時間は15分です。残りの設問3・4の答案枚数は1枚ずつ書くことになります。

 

ここで意地を張って設問3で1.5枚書くと、設問4は崩壊します。8分で設問1つ書くのは無理です。焦っている上に論文は一行目が1番ペンが動きにくいからです。

 

答案作成中にこまめに計算のやり直しをすることで、最後の設問が途中答案になるのを防げます。

 

 あいかわ先生や夏目先生がツイートしていたと思いますが、最後の設問はドル箱です。みんなが弱々しい書き振りになるのでちょっと書けるだけでも点数が上がるらしいです。

何も書かなければ0点ですが、何か書けば何点かもらえます。その数点が合否をわけることもあろうかと思います。

 

・答案にメリハリをつける

 答案のメリハリは論点のランクで決まるものではありません。問題文に特定の論点であてはめるであろう事情がどれ程あるのかが重要です。これが配点に次ぐ取捨選択の基準です。

 令和4年刑法では、ほぼすべての論点がAランク論点だったので若干上記の話とズレますが、同問題で一番重要な論点は平成29年の急迫性の判例に関する論点でしょう。

急迫性のあてはめ事情は4段落目すべてなので14行分あります。一方、原付窃盗部分の占有の有無については3行ほどです。分厚く書くべき論点は急迫性です。

 事情の多さに従って論点おきに事情を書き写して評価していけば、自然に作問者の意思と一致したメリハリになります。事情の多さに従い、論点ごとに書く量をどんぶり勘定で算出すると、程よい量を自然に書けますし得点効率もよくなります。

 

・わからない設問は計算した枚数分だけ白紙にして飛ばす

 わからない問題が設問1に来た場合、設問1でうんうん唸っていると簡単な後の設問で点数が取れないかもしれません。

そんなときは設問1を一旦白紙にして後の問題を解き、また戻ってくればいいです。

白紙にすべき枚数は配点おきに計算した枚数分です。設問1で1枚書く計算なら1枚ちょい白紙にしておき、戻ってきたとき1枚を満たせないなら、満たせなかった分に斜線やバッテンを入れればいいです。

 

【途中答案している人の特徴】

・設問ごとに、構成⇒起案をする

 しっかり構成を全問やってから論述を開始することをおすすめします。構成はとても頭を使います。

時間ないよ!っていう状況で冷静に構成するのはとても難しいです。ローでも一問ずつ構成する人はよく途中答案をしてました。

構成を先にやっておいた方が、「この論点は難しいから説明も難しくなる。論点が難しいと説明も難しい。よし、他の設問との時間を調整しよう。」といったような認識をもち、答案全体の見通しを立てやすいです。

 

・書き直す

 書き直すのは途中で(おや…?答案の様子が…?)(おめでとう!ゴミ答あn…)←「んんん??いやあああ!」っていう状況になるからでしょう。

途中でおかしく感じるのは答案構成がしっかりできてないからです。

構成ができないのは、あてはめの知識がない・構成のやり方が確立してない・読解力が低く問題が理解不能などの原因があります。

 ここは起案を通じて構成ができない原因をそれぞれ探すべきかと思います。構成のやり方については受かってリクエストとかもあったら記事にするかもしれないです。

 

・知識の理解がなく筆がすすまない

 上記記載の論点のあてはめを理解しているか否かという留意点と同じ話です。まず、インプットがないとアウトプットもできません。

アウトプットする前にある程度インプットしましょう。

 

・何からしたらいいかわからない

 論文初心者にありがちな状態です。論文を始めて書くのは、スケボーでいきなり自由にパフォーマンスやらされる感じだと思います。知らんけど。

 

〜答案構成段階〜

「設問読む→事例読む→当事者確定→言い分確定→請求の法的構成→(要件→解釈→あてはめ)⦅()を繰り返す⦆」という感じにシステマチックに処理し構成をします。要は4Sの処理手順です。

〜論述段階〜

上の"請求の法的構成"以降を参照して、上から順に処理します。最初の書き出しの言葉は少し言い回しが独特だったりするので、色々な模範答案をみて真似してみる必要があります。

 

上記の手順で論述していくことを繰り返し練習していれば徐々に書くのがラクになっていきます。 

 

・文字が丁寧すぎる

 特に女性に多いです。女性の答案を見ると「いや字ぃ綺麗スギィ!」って思うことが多いです(男性がもともと汚いだけかも)。文字丁寧に書くなら事情をたくさん拾ってください。早く書いて綺麗なら素晴らしいです。ごめんなさい。

 遅い人は文字をあえて雑に書くぐらいの気持ちでとにかく早く書いてください。というか、文字を綺麗に書くと作業興奮と生成される字の美しさで、しっかり考えてなくてもしっかり考えている感を覚えてしまうので危険ですよ!

 

おわり

令和4年司法試験 租税法 再現答案

60.35点

【第1問】

第1、設問1

 1 B はサラリーマンとして働く傍ら甲・乙を賃貸して収入を得ているので、これによる所 得は事業所得(27条)ではなく不動産所得(26条)である。

 2 次に、甲・乙に関する平成24年度の固定資産税を必要経費(26条2項、37条1項)に算入できるか

 ⑴ア 固定資産税は上記所得につき「直接に要した費用」ではない。

  イ 一方、甲・乙の賃貸のためには固定資産税を支払うのが前提だから、事業の遂行上必 要な費用として固定資産税は「業務について生じた費用」といえる。

 ⑵ しかし、「別段の定めがあるもの」として、必要経費に不算入とならないか。

 ア 甲

 (ア)56条1項の趣旨は、同族間における所得分散防止にあるが、配偶者が独立事業者 でも所得の分散はされうる。したがって、独立事業者間においても56条1項が適用されうる(弁護士夫婦事件)。

 (イ)本件では、Dは税理士として独立して事業を営んでいる独立事業者であるが、その場合でも所得分散を図り得るので、同条項が適用できる。

したがって、「対価に相当する金額」である平成24年度の固定資産税は「必要経費」に算入しない。

イ 乙

 固定資産税は、「地方税法」(45条4号)により徴収される税であるから、「必要経費に算 入しない」(同条柱書)。

⑶ よって、平成24年度の固定資産税は必要経費に算入できない。D は青色申告を提出していないので、57条も適用されない。

第2、設問2⑴

 1 まず、P 説によると遺産分割の効力が「相続開始のときにさかのぼって」生じる(民法 909条本文)ため、B は A の死亡時である平成22年1月1日の時点で甲を有していた ことになる。 以上を前提に検討する。

 2⑴ B は、甲という「資産」を「譲渡」した(33条1項)。この譲渡は33条2項各号の場合にあたらない。

 ⑵ 「総収入金額」は2000万円である。

 ⑶ 「資産の取得費」(33条3項、38条1項)とは、資産の客観的価格を構成する取得代金のほか、資産を取得するために支出した付随費用も含む(支払利子付随費用事件)

 相続登記費用は資産を取得するために必要な付随費用である。一方、代償金については、Bが遺産分割よりも前に甲を取得していたことからすると、資産の取得に要した費用とはいえない。

 したがって、相続登記費用のみが「取得費」に算入できる。

 ⑷ B は単純承認によって甲を取得したので、59条1項1号・60条1項は適用されず、B は平成22年1月1日から甲を保有していたことになる。

 そのため、甲の譲渡による譲渡所得は長期譲渡所得(33条3項2号、22条2項2 号)にあたる。

 3 よって、甲の譲渡による譲渡所得は総収入金額2000万円から、取得費16万円と特 別控除額50万円(33条3項柱書、4項)を控除した額に2分の1を乗じた額となる。

第3、設問2⑵

1 Q説によると、Bは遺産分割時に甲の共有持分権を有するCから、同持分権を取得した ことになる。以上を前提に検討する。

2 ⑴ Bは甲という「資産」を「譲渡」した。

 ⑵ 「総収入金額」は2000万円である。

 ⑶ 「資産の取得費」には、相続登記費用だけでなく、代償金の額も含まれる。

 代償金は、Cから甲の持分権を取得する際に要した費用だからである。

3 よって、甲の譲渡による譲渡所得は、総収入金額2000万円から取得費16万円と900万円を控除した額に、2分の1を乗じた額となる。

第4、設問2⑶

1 P説

P説によると、BはA死亡時に本来的にBが取得していたことになるので、代償金の取得は 「譲渡」による収入とはいえず、譲渡益は生じない。

2 Q説

Q説によると、BはCからCの甲持分権を取得することになるので、代償金の取得は「譲渡」 による収入といえ、譲渡益が生じる。

第5 設問3

1 乙の譲渡は「資産」の「譲渡」にあたる。

2 「総収入金額」は2600万円で、Bは乙を1500万円で取得しているから「取得費」 は1500万円である。

3 ここで、BはFの主債務についての連帯保証債務を履行するために、乙を売却している ので64条2項が適用されないか。

 64条2項の趣旨は、他人の債務についての保証債務を履行した保証人が、主債務者に求償権を現実に行使できなかった場合に、債務履行のためにした資産の譲渡所得にまで課税すると保証人に過度な負担となるのを防ぐ点にある。

 Bは、「保証債務を履行するため」に乙を「譲渡」したが、「求償権の全部」を行使できなかった。

 したがって、回収できなかった1000万円について「所得の計算上、なかったものとみ なす」(64条1項)。

 


【第2問】

第1、設問1

 1 A が取得した委託手数料は事業所得(27条1項)か給与所得(28条1項)か。

 2 事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性・有償性を有し、反復継続して行う意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生じた所得をいう。

給与所得とは、雇用契約又はこれに類する原因に基づいて、使用者の指揮命令に服して、 提供した労務の対価として受けるべき給付をいう。

 3⑴ A は契約で定められた事項によってのみ B 社に従属しているから、使用者の指揮命 令に服しているとはいえない。委託手数料は検針業務及び付随業務に応じた 出来高制だから、自己の計算において収入を得ている。就業時間は定例検針日の日数と受持件数次第で異 なるから、拘束性がない。主要な交通手段であるバイクの購入・維持費等は A の個人負担だから、自己の危険において業務を遂行しているといえる。A は検針作業を第三者に代行させることもできるので、独立性がある。

  ⑵ A の業務内容については B 社が責任を負い、A は B 社から身分証明書の交付を受け、社名入り作業衣等が貸与されているが、これは A の業務において損害等が生じたときに第三者が求償をしやすくするための外形上の表示にすぎず、A は実際に損害が生じたときは 清算金を支払う形で責任を負っているから、このことをもって独立性は否定されない。定例日制のために検針日が定められているが、これ以外の業務遂行日程については決められておらず、独立性は否定されない。A は月一回程度、B 社会議室での打ち合わせに出席しなければならないが、危険を伴う検針作業は定期的に仕様の確認や作業においての注意を促す必要があるからこれによって独立性は否定されない。委託手数料は B 社の一般従業員に相当し、特別謝礼金や解約謝礼金も支払われるものの、これによって独立性は否定されない。

 4 よって、委託手数料は事業所得にあたる。

第2、設問2

 1 A が B 社に支払った40万円は必要経費に算入されるか(27条2項、37条1項) に算入されるか。

 2 解決金は「直接に要した費用」ではない。一方、解決金を支払わない場合は B 社との 信頼関係が悪化するおそれがあるため、 同関係維持のために解決金は事業の遂行上必要な 費用にあたり「業務について生じた費用」にあたる(37条1項)。

 3 しかし、「別段の定め」により必要経費算入が否定されないか。 解決金は「損害賠償金」(45条1項8号)にあたり、さらに A は「重大な過失」によってB 社の財産という「他人の権利」を「侵害」したので(所得税法施行令98条2項)、「必要経費に算入しない」。

 4 よって、解決金は必要経費に算入されない。

第3、設問3

 1 過大に支払った電気料金は「一般管理費」(22条3項2号)として、令和2年の事業 年度の損金に算入される。

 2 次に、B から受け取った清算金は「その他の取引」での「収益」として益金に算入され る。

 ⑴ では、上記益金はどの事業年度の益金に算入されるか

 ア 法人税法においては、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従い計算される。したがって、益金は収益の原因となる権利が確定したときに算入される(大竹貿易事件)。

ここで、損害賠償債権は損害の発生時に発生するから権利の確定も同時点である。しかし、 通常人を基準として、権利の内容が把握できない場合など、権利の行使を期待できない客観的事情がある場合には、権利の行使を期待できるようになった時点で益金に算入される(日本美装事件)。

 イ A による設定変更は B 社という電力会社の業者でも把握できなかった。さらに、C 社にとっても過大に徴収されていることを直ちに発見することは困難であった。 そのため、通常人を基準に権利の内容を把握できず、権利行使できない客観的事情があった。

 ⑵ したがって、上記益金は設定の誤りが発覚した令和3年の益金に算入される。

第4、設問4

 1 過大に受け取った電気料金は「資産の譲渡」及び「役務の提供」として益金に算入され る。

⑴ ここで上記益金は清算金の支払いをしたため、この時点では益金算入できないように思える。

ア 権利確定主義の趣旨は納税者の課税時期における恣意防止にある。したがって、収益の 原因となる権利が確定していない場合でも、権利に関する金員等を現実に収受し、収益が実現したといえる状態が生じた場合は 、同時点で益金に算入しても課税時期の恣意を排除できる。

イ B社はC社から現実に金員を収受して、収益が実現したといえる状態が生じている。

⑵ したがって、令和2年の事業年度において益金に算入される。

 2清算金の支払いは令和3年の事業年度において「損失」(22条3項3号)として損金に算入される。

第5、設問5

 1 退職所得(30条1項)の趣旨は、退職金が継続的な勤労に対する報償及びその間の労務の対価の一部の後払い的な性質を有するうえ、老後の生活の糧となる機能を有することから、一度に高額の課税をすることをさける点にある。

 2 Dは勤続期間が13年なので30条3項2号により金額が計算される。さらに、22条 3項も適用される。徴収方法については源泉徴収(199条以下)による。

受験期におすすめの曲 10選

”感じたことない気持ち
知らずにいた想い
あの日踏み出して
初めて感じたこの痛みも全部
好きなものと向き合うことで
触れたまだ小さな光
大丈夫、行こう、あとは楽しむだけだ”

群青(YOASOBI)から引用

 

記事を見てくれた方、いつも勉強・就活・仕事とお疲れ様です。

特に、受験前にこの記事を見てくれた方や将来みているかもしれない私、本当に頑張ってください。

 

このブログが3万アクセスに達しそうなので、たまには勉強以外のことをメインにした記事もいいのではないかと思い、受験期に聞くとやる気の出る曲を選んでみた記事を書こうと思いました。ではいってみよ~~!!

※エモーショナルな記事にしたほうがいいのかなと思い、夜遅くにモンスターを飲んでウォークマン聞きながら書いています。

 

①群青/YOASOBI

まず、記事冒頭に引用した”群青”も受験期にお世話になった曲の一つです。

youtu.be

まず、イクラちゃんの声は本当にいい声です。世の中のすべてを肯定するような優しい声をしているので、歌詞に強い説得力が出るんですよね。

歌詞の内容を要約すると、「好きなことを追い求めると、好きなことが嫌いになるほどつらいよね。でも頑張って来たんだし最後は自分なりに楽しもうよ」って感じだと思います。

ロースクール時代は特に(僕、こんなことやってて大丈夫なのか・・・)ってずっと思っていたので、”大丈夫、行こう、あとは楽しむだけだ”と試験直前に言えるぐらい頑張ろうとモチベをあげていました。

 

②Step and a Step/NiziU

youtu.be

続いて2曲目も肯定系の曲ですね。

”大丈夫よ そのままで
安心して 遅れてないから”

っていう最初の歌詞で(あ、これすこ)ってなりました。

ロー進学で社会人組からは遅れるし、大学の後輩でもう司法試験受かっている人いましたからね・・・。

”Step and a step 私の歩幅で
Step and a step 私だけのペースで”
”ゆっくり行ってもいい
休んでみてもいい
歩いていく 自分らしく
Just believe yourself”

焦って自分を見失いそうな方、”比べるのは昨日の自分”と考えてよく寝て明日から頑張ってください。

 

それは僕たちの奇跡/μ's

youtu.be

これに関しては大学受験から聞いてます。

まず、曲調がめっちゃ希望に満ちています。めっちゃ元気出る!

”もう止められない情熱の勝ちだね
悔やむより走り続けよう
不意に見た空 こんなにも青いよ
大丈夫 あきらめないで走るんだ”

ここが一番好きですね。もう少し頑張ってみようってなります。

ラブライブ全盛期当時は異様な熱気があったこともあり、私もあんな風に頑張りたいなって思って勉強してました。

 

④F Wonderful World/ano

youtu.be

アイドル繋がりでラブライブの次にもってきましたが、アイドルソングではなくヒップホップに近いです。(あのちゃんってこんな曲歌うんだ・・・)って衝撃と快感を覚えた曲です。

要約すると「世の中はクソ!俺らしく生きるからみとけや」って曲です。

”僕以外誰が僕になれるの
君以外誰が君になれるの
後ろ向いた時だって後ろ指さされたって
中指立てて正解 世界、今に見ておけば良いさ

脳脳脳脳脳脳脳脳脳脳と生きたお嬢ちゃん
塀塀塀塀塀塀塀塀塀塀の中のお嬢ちゃん
NONONONONONONONONONO と言える僕になって
クソ素敵な世界作ってぶち壊そう”

つらいことがあっても世の中がクソなせいな時もあります。中指立てて頑張ろう!

 

⑤How Crazy/YUI

youtu.be

(本人の動画がないので素敵なカバーをリンク先にしました)

YUIは本当に芯の通ったかっいい歌詞を書きますよね。

私はこんな強気にはなれませんでしたが、YUIみたいに頑張ろうって感じで聞いてました。

 

⑥板の上の魔物/Creepy Nuts

youtu.be

”試験会場には魔物が潜む”・・・。受験生なら誰しも経験したことがあると思います。

そんな魔物に殺されかけたとしても、逆に飼いならして成り上がろうという曲です。

”呑まれちゃ一巻の終わり
時間はもう迫ってる
参観日のガキのごとく妙な気分で待ってる
何か起こりそうな予感
研ぎ澄ませテメェの五感
無冠の帝王じゃ終われへん
成し遂げてから死ななアカン
やたらヤバめ発汗作用
ナイトフライト夜間飛行
ブッ倒れて急患で運ばれるほど
振り絞ってこそ得られる生きてる実感
客がパンパンでもスカスカでもブチカマスだけ”

試験はつらかったですけど、なんの目標もなく生きるほうがつまらないですからね。

試験直前のキリキリ感は実は好きだったりしました。

 

⑦トレンチコートマフィア/Creepy Nuts

youtu.be

中学時代に勉強も部活も生活態度もダメだった私は、当時の担任の先生に執拗に執拗にイビられていました。

”こいつを絶対黙らせてやる”って思い、勉強を本気でやり始め学年下位20番から、学年トップ5になり、先生たちは何も言って来なくなりました。

「武器を持って戦って自分を認めさせる」

中学時代の自分を思い出して勉強を頑張っていました。

 

”お前の痛みなど誰も知らない なら言葉で気が済むまでわからせてやるまで
流れ流れたどり着いた
足手にまとわりついたあの時の思いをぬぐい去るように武器を手にし歩き出す”

 

見下してくる奴がいたら勉強で黙らせることもできるんじゃないでしょうか、知らんけど。

 

⑧Lose Yourself/Eminem

youtu.be

"Look
If you had
One shot
Or one opportunity
To seize everything you ever wanted
In one moment
Would you capture it?
Or just let it slip?"

せっかく親がローにまで進ませてくれてチャンスをくれたんだから、チャンスを掴まないといけません。

”You better
Lose yourself in the music, the moment, you own it
You better never let it go
You only get one shot
Do not miss your chance to blow
This opportunity comes once in a lifetime, yo”

人生は一度きりだし、今はこの一瞬しかないし、迷いもあるけど熱中しようと説得されます。

 

⑨あの頃じゃねえ/般若

youtu.be

中央ローに落ち、プライドを捨てて先輩や同期にすがって、先輩に「すごくよくなった!これなら大丈夫!」って言われて受験した都立大ロー・・・。

「あの頃じゃない!」って気持ちで試験を受けました。

 

司法試験のときも昔自分が書いたクソ答案を見ながら「あの頃じゃない・・・」って言い聞かせて試験に臨みました。

ローで大学のときより深い人間関係もたくさんできましたし、ロー期間で始めたバイトで人見知りもなくなりました。

まだ結果はわかりませんが、中央ロー落ちる前の自分とは比べられないくらい成長した自分がいたのは確実です。

 

”必ず出来るあの頃じゃねぇ
一番強いのは今だぜ”

 

⑩I Was Born To Love You/Queen

youtu.be

ラブソングではありますが、”生まれてきてよかった!生きてるだけでもよかった!”って思わせてくれる曲です。

こんなにエモーショナル、かつ、力強く愛を誓えるフレディはすごい!

 

以上10曲でした。曲っていろんな思い出や決意と共にあるなと思いました。

試験落ちたらまたこの曲たちを聞いて頑張ります!

みんなも頑張ろう!(何様)

模試の成績

司法試験から1ヶ月経ちました。

僕は現在、とにかく色々な分野の事務所説明会に参加して自分がどんな進路に進むべきか模索しているところです。

 

司法試験から1ヶ月経って思ったことが、まず一つ…。“司法試験受験に向かって頑張っているときの方が生きてる感じがしてました”

この合格してるかわからないから何をとっても大胆に行動できない感じ…生きてる感じがしません。

さらに、“今の居住地に友達が一人も居ませんwww”

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何かしなくてはと思いつつアルバイトを探しながら、アルバイトが決まったらまた新しいことをやってみたいです。

ひとまず、①アルバイトの採用と②事務所の面接の場数を踏むことを目標にします。②については、合格発表後は競争激化するので、なる早で内定欲しいですね。

 

ってことで(どういうことで??)模試の成績晒します。

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その心笑ってるね!!

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そうです。皆さんの予想通りよくない結果でしたよ、模試。

(去年の合格点はギリギリ超えてるから大丈夫大丈夫( ◠‿◠ ))って試験直前は言い聞かせてましたけどね。

 

択一の成績も上げたし、模試のときに調整していなかった民事系も調整はしたんですけど、どうでしょうね?

 

きっと合格してるよね?ハム太郎

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短答の結果

本日短答の結果が返ってきました。f:id:Sihou_friends:20220613151438j:image

 

Study web さんによると1400人基準が維持されるとの予想なので、遅れをとったわけではないくらいの点数ですね。

論文を採点されるだけでもマシですが、論文で1科目でも失敗してたらヤバい成績といえると思います。

これから受験される方は、140点取れるよう頑張ってください。

 

反省点やよかった点

・直前期までに苦手な肢や設問をピックアップせず、直前期に択一回しの効率化を計れなかった

・論文(特に民事)に時間を割きすぎて択一が放置気味だった。民事系が苦手な場合、その分量からしても先に済ませておくべき。

・予備試験はローの最後の学年まで受けるべき。上3だけ勉強して、①現場で頑張る力②マークの正確性を身につけるだけでもお買い特!

民法については条文の素読をした方がよかったか?苦手ゆえに一番回転させたがやはり点数は伸びず。

・刑法はやはり体系的理解と瞬時の判断がよく訓練できていた。パズル問題はノーミス。罪数で間違えて満点を逃す。パズル問題の解き方は①過去問をタイマーを使いながら解いて練習②中村充先生の解き方を習得③基本刑法で学説対立を抑えるの3点で繰り返せば、上手くなる(僕も最初は全く解けず)。

憲法はうんち💩

 

あと、バイトは落ちました!同情するならカネをくれ!

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